剣道の理念
剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である
剣道修練の心構え
剣道を正しく真剣に学び
心身を練磨して旺盛なる気力を養い
剣道の特例を通じて礼節をとうとび
信義を重んじ誠を尽くして
常に自己の修養に努め
以って国家社会を愛して
広く人類の平和繁栄に
寄与せんとするものである
剣道指導の心構え
(竹刀の本意)
剣道の正しい伝承と発展のために、剣の理法に基づく竹刀の扱い方の指導に努める。
剣道は、竹刀による 「心気力一致」 を目指し、自己を創造していく道である。 「竹刀という剣」 は、相手に向ける剣であると同時に自分に向けられた剣でもある。この修練を通じて竹刀と心身の一体化を図ることを指導の要点とする。
(礼法)
相手の人格を尊重し、心豊かな人間の育成のために礼法を重んずる指導に努める。
剣道は、勝負の場においても 「礼節を尊ぶ」 ことを重視する。お互いに敬う心と形(かたち)の礼法指導によって、節度ある生活態度を身につけ、「交剣知愛」 の輪を広げて行くことを指導の要点とする。
(生涯剣道)
ともに剣道を学び、安全・健康に留意しつつ、生涯にわたる人間形成の道を見出す指導に努める。
《剣道の目的》
剣道は竹刀で打ち合って、勝った負けたという技を争う競技でなく、すこやかな心を育て、健全な身体をつくり、正しい礼儀を修めるために練習をするのです。したがって剣道を修める事は、
- 心をみがく
- 身体を練り鍛える
- 技術を習得する
を目的としています。それは争いを目的とした暴力でなく、健全な社会人となるため、武道を修めるのであるから、この目的を一日も忘れてはなりません。
《剣道と礼儀》
礼儀は人間として、平和な社会生活をする上でも大切ですが、ことに剣道では昔から「礼に始まり礼に終わる」といわれているように、きわめて大切なものとされてきました。
どのように技が上達しても、品位や人柄が欠けているようでは、本当の剣道を習ったとはいえません。
ことに剣道は多くの運動の中でも最も激しい性格を持っているものの一つなので、少しあやまると荒っぽい行動になりやすくなります。
これを未然に防ぎ、正しい剣道を習得するためにも礼儀や作法が、やかましくいわれるのです。
道場だけでなく、家でも、学校でもどのようなことがあっても、常に真心をもって礼儀正しくし立派な人格と精神を養うように心がけなければなりません。
《座法》
剣道の礼には立礼と座礼がある。練習や試合をする場合には一般に立礼が行われ、道場内の練習の始めと、終わりには、座礼がおこなわれます。
1.正座のしかた
- 目は前方を正視する
- 左足をわずかに後ろに引き静かに膝をつき、次に右膝をつく。
- 両足の親指を重ねる。
- 両膝の間を少し開き、(約20センチ)静かに座る。
- あごを引き、背筋を真直ぐに伸ばし、頭を真直ぐ保つ
- 肩の力を抜き、口を閉じて、腹式呼吸をしながら前方を正視する。
- 両手は五指をそろえて、内側に向け、ももの上に置く。
2.立ち方
腰を上げ両爪先をたて、右足をわずかに前に踏み出して静かに立ち、左足を右足に引きつける。
3.座礼のしかた
正座の姿勢で相手を注視し、上体を静かに、ゆっくり前方に傾けるとともに、両手を膝前に進めながら、指先を伸ばし、八字形におき、静かに頭を下げ、
少しの間その姿勢を保ち、ゆっくりと元の正座の姿勢にかえる。
(注)首をまげたり腰を上げたりしないこと。
《中段の構え》
中段の構えは、攻撃にも、防御にも適した基本の構えである。
(1)要領
真直ぐに立った姿勢から右足をやや前に出し、左拳は臍の下約一にぎり前
のところで、右拳は鍔からわずかにはなして握る。竹刀の弦を上にし、剣先の延長線を相手の咽喉の高さにして構える。
(2)目の付け方
相手の目に付け、しかも身体の全体が見えるようにする。
(3)竹刀の握り方
左手は小指を柄頭いっぱいにかけて上から握り、右手は鍔元からわずかにはなして、上から握る。両手とも小指、薬指でしめ、中指、人差し指、親指は力を抜き(親指は下方に向くように)親指と人差し指の分かれ目に竹刀の弦の延長線がくるよう、やんわりと握る。
(4)両肘の屈げ方
両肘は張らず、すぼめず、力を入れずに自然に屈げる
(5)両足の位置と踏み方
両足の爪先は前方へ向け、左右の開きは約10センチ、前後の開きは右足の踵の後ろの線あたりに左足の爪先がくるように置き、体重は両足にかけ左足の踵は、わずかに浮かせ、右足の裏は全部つける。両膝は、身体が自由にどの方向にも運べるように自然に保つ。
《足さばき》
足さばきとは、身体の移動や打つ時の足の運び方であって、歩み足、送り足、開き足、つぎ足などがある。歩み足は前後に大幅に速く移動する場合、送り足はいろいろの方向に小幅に速く移動する場合に用い、開き足は、身体をかわしながら相手を打突したり、防いだりする場合、つぎ足は遠い間合いから打突する場合に用いる。
1.歩み足
平常の歩行と同じ方法で進んだり退いたりする。
(イ)足をあまり上げないように、すり足で行う。
(ロ)腰を中心に重心を出来るだけ水平に移動させる。
(ハ)上体や竹刀を動揺させたり、構えを崩したりしないように移動する。
2.送り足
移動する方向に近いほうの足から踏み出し、他の足を直ちに送り込むように引き付ける。
(イ)送り込むほうの足が遅かったり、残ったりしないように早く正しい足の位置がとれるようにする。
(ロ)後退の際、後足の踵が床に着かないようにする。
(ハ)その他は、歩み足に準じて行う。
3.開き足
右(左)前に開く場合は、右(左)足を相手の方向に向けながら右(左)斜め前に出し、左(右)足を右(左)足に引き寄せ、左(右)腰を左(右)後方にひねって相手の方向に正しく向ける。
右(左)後方に開く場合も、右(左)前に開く場合に準じて行う。
(イ)あとから運ぶ足を正しい位置に引きつける。
(ロ)腰を中心に重心を移動させる。
4.つぎ足
左足を右足の位置まで引きつけるや、直ちに右足から送り足の要領で大きく踏み込むのである。
(イ)左足を引きつけるときは、動作がとまりやすいから、相手に打ち込む機会を与えないように、左足を引きつけるや、直ちに右足を踏み出すようにする。
(ロ)最初に左足を引きつけてから、次に右足を送り込むまでの動作を一息で行うようにする。
《かけ声》
剣道では、掛け声も技の一つといわれているほど、大切なものである。
掛け声は、腹の底から大きく、重みがあり、力強いものでなければならない。
口先だけの弱い「犬の遠吠え」のような声は、かえって相手に軽く見られて逆効果となる。しかし、無用な掛け声や、野卑な掛け声を出してはならない。
掛け声の効果は、
(1)意志が集中して、元気を増し、気力を養う。
(2)相手に威力を感じさせる。
(3)心気力(気剣体)が一致する。
(4)打突がしやすく、しかも鋭くなるなどの利点がある。
《打ち返し(切り返し)》
剣道上達の近道は打ち返しを十分練習する事である。また、基礎を養うにも有効な方法である。
1.打ち返しの方法
(1)その場、連続左右面打ち。
(2)前進連続左右面打ち。
(3)後退連続左右面打ち。
(4)正面ー前進連続左右面打ち。
(5)正面ー後退連続左右面打ち。
(6)正面ー前進連続左右面打ちー後退連続左右面打ちー正面
2.打ち返しの効果
(1)体制を整え身体を柔軟にし、手足の力を増す。
(2)身体を強くし、間合いを知り、打突を正確にする。
(3)両手の腕力平均にし、前後左右からだの動作を敏捷にする。
3.打ち返しの注意事項
(1)両肩、両腕を柔らかく力を抜く。
(2)動作は大きく正確にする。
(3)左拳は身体の中心線から外れないようにする。
(4)刃筋を正しくする。
(5)両拳のしぼりと足の運びを一致させる。
《かかりげい古》
かかりげい古は、自分より上手な相手に対して、正しい間合いから気合いを込めて激しく打ち込み、また相手に打たれる事を、いっさい頭におかず、体力、気力のつづくかぎり、出来るだけの技を多く出して打ち掛かるのである。
(注)掛け声を大きく、遠間から体を十分動かし、正しい姿勢で確実な打突をしかけ(基本で習得した技)捨て身で打ち込んでゆくことが必要である。
《目付け》
「目は心の窓」とか「目は口ほどにものを言い」と昔からいわれているように、心の動きが最も良く現れるのは目である。
したがって目の付け方は、心の動きを最も良くあらわす相手の目に付け、少しの動きをも見抜くように心がけ、しかも相手の一部だけを見ているのではなく、身体全体をも見るようにするのである。
<観(全体)見(一部)の目付けという>
《間合》
相手と自分との距離を間合という。剣道では、この間合を三つに分けている。
(1)一足一刀の間
一歩踏み込めば相手を打突でき、一歩さがれば相手の攻撃を、確実に
はずす事の出来る距離で、打ち間とも言われ、剣道の基本的な間合である。
(2)遠間
一足一刀の間合より遠い間合を言う。
この間合は、相手が一歩踏み込んで打突しても、有効な打突にはならない安全な間合で、試合や、上位の者に対しては、この間合をとり、相手の隙を見て、一足一刀の間合に進んで打突するのである。
(3)近間
一足一刀の間合より近い間合で、そのまま一歩踏み込んで打っても「もと打ち」となり、一歩でも退けば、すかさず相手から打突される危険な間合である。
《残心》
(1)残心とは、打突した後の「心身のそなえ」を言うのであって、わかりやすく言えば、油断をしないという事である。
(2)打突した後油断すると、構えがくずれたり、攻撃が成功しなかった場合すぐ相手から反撃されたり、また、続いて攻撃する事ができなくなるので、どのような場合でも油断せず、いつでも打突できる心構えが残心である。




